G20振り返り

先週末の大きなイベントはニュージーランドの総選挙と、もう一つはG20(豪州ケアンズ)でしたね。 今回のG20について言えることは、「円安のつるしあげはなかった」「マーケットに特にインパクトはなかった」ことかと思います。
出所:日経 2014-09-21

  • ルー米財務長官:G20の閉幕後の記者会見で、日本とユーロ圏の最近の成長鈍化について「期待外れとなった」と表明。日本については、消費税増税後に個人消費と投資が落ち込み「経済活動の縮小による困難に直面している」。ユーロ圏に関しては「失業率が記録的に高い水準にあり、物価上昇率は危機的に低い」と指摘。短期的な内需拡大と長期的な構造改革の「双方を実行する必要がある」とし踏み込んだ行動を求めた。(一人勝ちですからね。)
  • ドイツのショイブレ財務相「持続的成長には持続的な財政・構造改革・投資が必要だと指摘。需要拡大に向け、追加措置をとる余地は小さいとの認識がG20で共有されている」(ドイツからすれば自国の財政支出より、他のユーロ圏国の構造改革ですね)
  • 麻生財務相:G20で日本経済や成長戦略について説明、消費増税の影響はあったが均してみれば成長は続いていると述べた(直近のGDP成長率からみて減速は明らかですね。)。さらに財政再建に関連して、2015年度のPB赤字半減に向けて取り組む必要があること、さらに10%への消費増税について「経済状況を総合的に勘案して、今年中に適切に判断する」と伝えた。また、2015年度予算策定後には2020年度のPB黒字化目標達成のため新たな計画を準備する必要があると表明、財政再建への意欲をコミットした。
  • 欧州ではデフレ懸念も台頭しており、財政収支がバランスしているドイツには財政出動の余地があるとみられている。麻生財務相も財政戦略の議論に関して「国によって事情は違う」としながらも、「たとえばドイツは財政収支が完全にバランスしている」と説明。対応の余地があるとの認識を示した。

もし「消費税の再増税は見送り」となった場合、市場の反応はどうなるか?

目先の『最弱通貨』をユーロと争う円。今後長期的に最も弱い通貨になってしまうか、消費税再増税の行方次第かと思います。もし「消費税の再増税は見送り」となった場合のシナリオを考えてみました。

【シナリオ1】

  • 財政再建への期待が剥落し債券が売られ、金利が上がる
  • 金利上昇と、これまで積みあがった円ショートの巻き戻しにより、急激に円高にふれる
  • 日本株市場は、増税見送りによる景況感の改善よりも、急激な円高による企業業績への悪影響と日本の国力低下に伴う海外機関投資家の売り圧力が勝り、急落する

【シナリオ2】

  • 日銀が債券の大半を吸収して需給が締まっているため、金利は上がらない
  • 国際公約としての財政再建への海外の期待が剥落し、日本の国力低下に応じて円が売られる
  • 日本株市場は、増税見送りによる景況感の改善と円安効果による買いよりも、日本の国力低下に伴う海外機関投資家の売り圧力が勝り、急落する

ただし両シナリオともに、再増税見送りは景況感が一段と悪化している状況であるため、日銀の追加緩和がセットであれば、英国の経済がここ数年で(資産効果により)立ち直った経緯と類似してくる可能性もあると思います。

最悪のケースは、「景気はすごく悪くなっているわけでもなく弱含み程度の状態で」消費税を上げてしまうという状況かと思います。この場合は日銀が追加緩和に踏み切る口実が成立しないように思います。

いずれにしても『最弱通貨』はユーロではなく今後長らく円だろうと思います。ユーロ圏(というか一人勝ちのドイツ)は日本と違って貿易黒字ですので、現在の金融緩和によって、今後着実に地力があがっていくと思います。

新規国債の発行がゼロになるドイツから学ぶこと

日本では消費税の再利上げの議論が高まるなか、ユーロ圏の「一人勝ち国」ドイツは、歳入と歳出が国債発行無しで46年ぶりにバランスする、というニュースをメモしておきます。

消費税増税後の「買い控え」が長期化して先行き厳しい日本とは大きな違いですね。ドイツから学べる最も重要な基本は、「財政再建には歳出削減も重要だが、それ以上に歳入を多くすること、言い換えれば『持続的な経済成長』がより重要ということ。

ドイツが財政再建に成功した理由は? 日本が学べることはある?
出所:THE PAGE 2014-09-19

  • ドイツのショイブレ財務相は、ドイツ連邦議会において2015年度予算案について説明、その中で新規国債の発行がゼロになる見通しを公表。旧西ドイツ時代も含め新規国債がゼロとなるのは実に46年ぶり。ドイツは、欧州各国に財政を健全化するよう強く求めているが、自身がお手本を示した形
  • 2014年度におけるドイツ連邦政府の歳出見込みは約2965億ユーロ(約41兆円)、対して歳入は2898億ユーロ、歳入と歳出はほぼ均衡。これによって新規国債の発行をゼロにすることが可能
  • ドイツは、財政均衡を義務付ける法律を制定しており、財政に対しては厳しいスタンス。歳入のうち税収が占める割合は9割に達しており、借金に頼らずに財政を運営できる体制を整備
  • ドイツにおける政府債務のGDP比は、政府が保有する資産を差し引いた数値で約50%、米国が約80%、日本は約140%。一方、資産を差し引かない数値では、ドイツが約70%、米国が約100%、日本は約250%。ドイツや米国は連邦制のため単純比較はできないが、ドイツ政府の債務比率の低さは突出。日本は借金も多い代わりに資産も多いので問題ないという意見もあるが、少なくともドイツや米国との比較では当てはまらない。また日本政府が持つ資産は、流動性が低く、実質的な資産価値が低いものも多く含む
  • ドイツは基本的に緊縮財政を推し進めたことで財政再建を実現したが、緊縮だけが財政再建を実現できた理由ではない。ドイツは好調な経済が続いており、税収が伸びたことが財政再建の原動力。米国の財政も急激な改善を見せているが、これも好調な米国経済を背景に税収が増えたことが大きく影響。つまり財政再建には歳出削減も重要だが、それ以上に歳入を多くすることがより重要
  • 日本はこの20年間、経済成長がほとんどなく増税以外に税収を増やす手段が無かった(この間、先進諸外国のGDPは1.5倍から2倍に拡大)。今の状態では、政府が国際公約として掲げる2020年度までの基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化という目標は、消費税を10%にしても達成困難財政再建を実施するためには、持続的な経済成長を実現することが、何よりも重要
  • 税収は名目GDPと相関しており、経済成長すれば税収は増える。日本の名目GDPは97年がピークでそこから伸びておらずかつ法人税率も下がっている。持続的な経済成長こそが、持続可能な財政再建をもたらす。