トルコ経済の特徴

【概況】

  • 若年人口が多く労働力が豊富、2020年までの10年間で人口は10.7%増加、約8400万人となると予測
  • 中近東で最大の経済規模
  • 恒常的に経常赤字、主因は貿易赤字。中間財を輸入し、最終製品を輸出する構造のために、景気拡大局面でも貿易赤字が膨らみやすい。エネルギー資源のほぼ全量を輸入に依存、経済成長による所得増加を背景に個人消費が増加していることも輸入の押し上げ要因。輸出は、主な輸出先のEUの景気や隣国の中近東の地政学リスクの影響を受けて変動する
  • 経済構造を転換するために高付加価値型の製造業を育成する施策(関税や付加価値税の免除等)を推進、またエネルギーの対外依存を減らす原発建設等を計画
  • ただし、経常赤字拡大を防ぐ目先の方法としては、景気拡大を抑制(内需を冷やして輸入を抑制)せざるを得ない
  • トルコ中銀(TCMB)のインフレ目標は、5%
  • GDPの中で個人消費が7割を占める
  • 失業率が8~10%と高い。主因は人口増加であるため、短期的な対応は困難。
  • 建国100年に向けた「2023年ビジョン」として、2023年までに経済規模で世界のトップ10に入る等の目標、大型のインフラ・プロジェクトが多数進行中。
  • 2001年の金融危機でリラは対ドルで50%以上暴落、GDP成長率はマイナス5.7%。IMFの支援のもとで、国営企業の民営化、金融機関の再編などを断行
  • 2002~07年は年平均7%弱の成長を達成。2003年以来の与党である公正発展党(AKP)による安定した政治・経済運営が持続。AKPのもとでインフレ目標が導入され、インフレ拡大はおおよそ沈静化。2005年1月1日に100万トルコリラ(TL)を1新トルコリラ(YTL)とする新通貨を発行、実質的なデノミを実施
  • 2008~9年の世界金融危機では、2000年金融危機の際に金融機関の体質強化を図ったことが功を奏し、影響は比較的軽微
  • 財政赤字(対GDP比)は2002年の13.9%から2011年には0.3%*に縮小、2011年の公的債務残高(対GDP比)は39.4%。EUの財政規律「財政赤字3%以内、公的債務残高60%以内」をクリア。経済危機前に81行あった銀行は45行に整理・統合、財務内容は健全化。銀行部門の自己資本比率は16.5%で、BIS基準の8%を大きく上回る
  • 高成長を背景に、民間企業活動も活発化、上場企業も増加。徐々に中間層も増加し、消費構造も変化を遂げつつある。EU 加盟交渉の開始、国営企業の民営化等に伴い、外資の進出も増加、外資が牽引する自動車産業はトルコの主要輸出産業となっている
  • 2001年までの輸出は食料・繊維の軽工業製品が中心だったが、その後の輸出は自動車、家電、鉄鋼などの重工業製品に広がりつつあり、2004年からは自動車が輸出品目の首位
  • 90年代よりEU加盟交渉が開始しているが、キプロス問題や、近年の経済発展による自国への自信、ユーロ危機による幻滅などをうけて、ここ数年の国内世論はEU加盟に否定的になっている

【2011年】

  • 前年から2011年中盤まで、8~9%台の高成長が続いたことで、景気に過熱感が出始める
  • 10月以降、自動車などの特別消費税を引き上げ、トルコ中銀も数度にわたり政策金利を引き上げ
  • 以後、GDPは2011年1Qの+12.4%をピークとして2012年4Qまで7四半期連続で減速することになる

【2012年】

  • 欧州債務危機などの影響により予想以上に景気が冷え込む。GDP成長率は政府の修正予測3.2%をも下回る2.2%。内需は、投資が7.5%減少、消費も0.1%増と低迷
  • CPIは前年比6.16%の上昇で、政府目標修正値の7.4%、中銀予測の6.5%を下回る。CPIは食品価格が抑えられたことと、内需の低迷が主因で、前年の2桁上昇から下落

【2013年】

  • 5月、反政府デモ発生。6月、反政府デモ活動が活発化 90ヵ所以上10万人以上が参加。政府はデモ隊を強制排除、トルコリラが下落(緑地再開発計画への抗議運動が発端、反対運動は独裁者と批判されるエルドアン首相への反感として増幅)
  • 2013年第1四半期のGDP成長率は前年同期比+3.0%、内需の回復、国内消費の回復に牽引され市場予想を上回った。
  • 2013年第2四半期のGDP成長率は前年同期比+4.4%で市場予想を上回った。成長率は2011年1Qの+12.4%をピークとして2012年4Qまで7四半期連続で減速したが、2013年に入り2四半期連続で加速。民間消費が加速し、全体を押し上げた。輸出は減速した一方、輸入が加速し、純輸出はマイナスに寄与。
  • 2013年第3四半期のGDP成長率は前年同期比+4.4%と、市場予想を上回った
  • 2013年第4四半期のGDP成長率は前年同期比+4.4%と、市場予想を上回った

【2014年】

  • 1月中旬、米金融緩和の縮小(テーパリング)や、中国経済減速への警戒感を背景に、高リスクの新興国通貨から投資資金が流出。トルコリラも急落し、1月27日に対米ドルで、一時1米ドル2.38リラ台と史上最安値を更新、対円では一時1リラ=42円84銭
  • 今年1月から始まった米国のテーパリングにより、新興国通貨が大きく動揺、中でも経常赤字を多く抱える「フラジャイル5」と呼ばれるトルコ、インド、インドネシア、ブラジル、南アフリカの5カ国は、QE3縮小によって新興国から資金が引き揚げられるとの観測から軒並み下落。まず、1月23日に起こったアルゼンチン・ペソの対ドル相場の急落による「アルゼンチン・ショック」では、ペソは1日で11%下落。アルゼンチン・ショックの直接の引き金を引いたのは1月の中国PMI速報値。この指数悪化で中国に農産物を輸出しているアルゼンチンの輸出が伸び悩むとの観測から、ペソが急落。アルゼンチン同様、対中輸出が多いトルコや南アなどの通貨も急落し、インドやインドネシア、ブラジルなどのフラジャイル5の通貨も売られた
  • トルコ中銀は1月28日の緊急の金融政策委員会で、通貨防衛と通貨安に伴う物価上昇の抑制を目的に政策金利の大幅な引き上げを決定
    • 1週間物レポ : 4.50% → 10%
    • 翌日物貸出金利(上限金利) : 7.75%  → 12%
    • 翌日物借入金利(下限金利) : 3.5% → 8%
  • 翌日物貸出金利は2011年10月~12年2月に適用されていた12.5%以来で、ほぼ2年ぶりの高さ。中銀は声明で「(最近の通貨急落などが)物価や経済安定に与える負の影響を封じ込めるため、必要な手段をとる」と指摘。インフレ見通しが落ち着くまで引き締め方向の金融政策を続けると明記
  • 利上げは13年8月の定例会合以来、約5カ月ぶり。事前予想では2.25%程度の利上げを予想する関係者が多かった。4.25%は市場予想の上限。当該利上げは、3月に統一地方選を控え景気刺激を優先したいエルドアン首相が公然と反対論を唱える中での決定
  • 政府は、2012年に大幅な減速傾向を示した経済が2013年には回復軌道をたどったとして、2014年の実質GDP成長率の目標を4.0%、1人当たりの名目GDPを1万1,277ドルと設定。一方IMFは2014年の成長予測を当初の3.7%から3.5%に下方修正、懸案の経常収支の赤字に関しても政府目標よりも厳しく予測。
  • 第1四半期のGDP成長率は前年比4.3%で、市場予測を上回った。前期(2013年4Q)の4.4%からは減速したものの18四半期連続のプラス成長で、市場予測の4.0%を上回った。外需と民間消費の寄与度が高く、成長の牽引役となった。政府は、2014年通年目標の4.0%は達成可能な水準とした。
  • トルコ中銀は、7月17日のの金融政策委員会で、インフレ圧力が低下しており、経常赤字も大幅な改善が見込まれるとして、0.5ポイントの利下げを実施、政策金利を8.25%に引き下げ。TCMBの声明文では、これまでのリラ安の影響剥落で今後インフレ率の低下が予想されることなどが理由
  • 上半期はEU向け輸出が回復、貿易赤字は縮小。主にEU向け輸出が回復した結果、貿易赤字は21.9%減の395億7,601万ドルに改善した。下半期は、イラク情勢やイスラエルとの関係悪化によって中東市場に減速懸念があるものの、欧州市場は復調が見込める予測
  • CPI(7月)は市場予想を上回る前年比+9.32%
  • 失業率(5月~7月)は、8.8%
  • トルコ中銀は8月27日の金融政策委員会で、主要政策金利である1週間物レポ金利を8.25%で据え置き、市中金利の事実上の下限となる翌日物借入金利も7.5%で据え置き。一方、同上限となる翌日物貸出金利の引き下げ(12.00%→11.25%)。主要政策金利である1週間物レポ金利を据え置くことにより、インフレや通貨リラに配慮する姿勢を示した一方、翌日物貸出金利を引き下げ、市中銀行の貸出金利に低下余地を生じさせることにより、景気への配慮も示した
  • 貿易収支(7月)は赤字改善
  • 製造業PMI(8月)は50.3、3か月ぶり50台復帰
  • CPI(8月)は+9.54%で市場予想を上回る上昇。主因は、干ばつに伴う食料品価格の高騰
  • 鉱工業生産(7月)は前年比+3.6%、予想を大きく上回る